たった一人で土を耕し葡萄を植え、最初のスティルワインはヴィンテージ2007年、数量229本の記念すべき「シャルドネ」。ステンレスタンクですっぴんのシャルドネを作ることが土地のポテンシャルと醸造家の質を鏡のように映し出すそうです。醸造家であり代表者である小山英明さんの話を最初に聞いた時、タンクの中ではデビュー待ちの醗酵が進行していました。「最初がとても大切なのでこれからのリュードヴァンの世界観を指し示すカッコいいラベルとシンボルを作ってください。日本でもフランスでもそのどちらでもなく、この「東御」という地を表現しいずれ世界のトップシャトーとも肩を並べられるような。100年くらいかかるかもしれません。そして僕はあと数十回しかワインを作れないから、急がなくちゃいけないんです」資金を集めるため最初の229本と共に一人で行脚し、葡萄畑がどんどん広がって耕され、いつの間にか幹は何倍にも太くなり、しっかり腰をすえた醸造所には大きなステンレスタンクが整然と並ぶ光景を長編映画のように見てきました。最初の229本のタンクのシャルドネを初めて飲んだ瞬間、その日から白ワインを飲めるようになったのを覚えています。
ココ
アトリエガングで黒猫を購入し窓際に飾っていたところ本物の黒い子猫がある日突然ワイナリーにやってきました。スタッフが家に保護しても抜けだしてワイナリーに戻ってきてしまう。黒猫とワインといえばドイツの「シュバルツ・カッツ」が有名で商人がワインを買い付けにツェル村を訪れたとき最終候補を3つの樽にしたそうです。迷っていたところ一匹の黒猫が一つの樽の上に乗っかり威嚇してきたそうです。そしてそのワインを飲んでみると今までのどのワインよりも美味しかったという逸話があります。
「ココ」と名付けられたリュードヴァンの黒猫はいまでは暖房付きの豪華なハウスをつくってもらい、その黒猫の名前を冠した大変贅沢な初の貴腐ワイン「ヴァンドゥー・ココ」まで発売となりました。とどめにアトリエガングとのコラボで「招きココ」まで出来てしまいました。
ヴァンムスー
リュードヴァンには創業以来たった1つだけ欠番のヴィンテージがあります。2011年のシャルドネ。この年、天候の影響で葡萄が不作になりました。わずかな出荷しか望めないため欠番にすると連絡が入りました。収入も無くなります。そのわずかなシャルドネを寝かして完全なシャンパーニュ製法でスパークリングワインを作るというのです。シャンパーニュ地方は元々気候的にワイン製造に向いていなかったそうでそこで生まれた技術がアッサンブラージュ。本来ワインはヴィンテージ(収穫年)を楽しむものでもあり良い年もあれば悪い年もあります。複数年の年の葡萄を混ぜることによって常に収穫年に左右されない一定の味とクオリティを保たせているのがシャンパン。悪条件を逆手に取ってまさに一発大逆転。リュードヴァンでもこの辛い不作を利用して、わずか数年で本格的シャンパン製法のスパークリングワイン(ヴァンムスー)をデビューさせることができたのです。そこで我々もアッサンブラージュ。金色を使わずしてラベルを金色に見えるように銀色のラベル紙にリュードヴァンの様々なエッセンスのように複数の色調をちりばめて結晶化。